冬のカムチャッカ・アバチャ山
(2741m)
坂上光恵
夏のシーズン中チャーター便が
飛ぶのと異なり、日本からカム
チャッカに行くのはなかなか面
倒であり、結局モスクワ経由に
なってしまった。現地でチケッ
トを買ってもらったのでそんな
に高くなかったのは良かったが
、3月19日モスクワ発16:
00で時差6時間遅れから、3
時間早い州都ペトロパブロフス
キー・カムチャツキーについた
のは10:00。飛行機の窓か
ら山の上の方だけが沢山見える
。カムチャッカには火山が18
8もあり、そのうち28は活火
山だそうだ。飛行の疲れをとる
ため、今日はパトランカという
温泉泊まり。といっても温泉プ
ールで、周囲は雪が積もってお
り42度といってもぬるくてな
かなか出られない。夜になると
若い人達がグループで泳いだり
飲んだり賑やかである。
カムチャッカに来たら新鮮な魚
が食べられると想像してきたら
、6月がシーズンで今は無いと
いうことで、イカのソテーで夕
食。
20日アバチャ山登山の予定を
打ち合わせるが、サイクロン(
大きな低気圧)がやってくる予
報がでていてだんだん悪天候に
なるだろうとの話である。いろ
いろ話し合うが予定どおりアバ
チャ山を登りたいということで
落ち着く。翌日登山基地の村を
9:30に出発。すぐ山スキー
をつけて標高800mにあるベ
ースキャンプを目指すが、天候
がだんだん崩れていくのがよく
わかり、風と雪が強くなり14
:30ロッジに到着。魚のぺリ
メニ(水餃子のようなもの)で
温まりほっとする。ここは比較
的新しいログハウスでアバチャ
山の向かいにあるコリャーク山
の側にあり大変快適。夕方ロー
カルガイドがやってきた。去年
エヴェレストに行ってきたそう
だ。今ここの山岳会はとても盛
んで、世界中の山に遠征してい
るとのことで、女性も含め若い
人達が多く登山をしているとい
う話に日本との違いがあった。
トレッキングは登山とは別なの
で、登山活動だけだそうだ。日
本人は夏になると毎日沢山やっ
てくるが、ここではなくアバチ
ャ側の山小屋に泊まるとのこと
。夜、スノーモビルでそこから
管理の人が遊びにやってきた。
日本人は本当に花の名前をよく
知っていて、
写真を撮り喜んで帰るそうだ。
22日9:20高度順応と山ス
キーの練習にでかける。天気が
悪くならないうちに登りたいと
少々あせるが、やはり準備が大
事と北に向かってひたすら進む
。キャメルという岩まで上がり
1本、振り返ると昨日のルート
が見える。そこから又ちょっと
突き出たボグラグリノフピーク
というところまで上がり、スキ
ーダウン。14:40小屋着。
23日。朝から風強く何も見え
ない。様子をみることになる。
ロシア人の8人くらいのグルー
プが朝から飲んで賑やか。ほん
とによくしゃべる。意外と女性
が静かである。
午後からコリャーク山の途中ま
で登りスキーダウン。雪が硬く
おりるのがたいへん。明日アタ
ックしようということになった
が、咳がひどくあまり眠れなか
った。
24日7:00朝食。8時発の
予定だったがあまりの強風に様
子をみて、9:30スノーキャ
タピラーで途中まで行くことに
して出発。ところが雪と風がひ
どく周囲が真っ白でほとんど何
も見えなくなり、進めなくなっ
てしまい標高1500mでスト
ップしてしまい、スノーキャッ
トをガイドが先導し何とか下り
る。キャメル岩のところからは
スキーであっという間に下り1
2:30ロッジ着。ああ、いつ
登れるのかなー。明日も天気が
悪そう。
夕方管理人のおじさんに頼んで
サウナを炊いてもらいさっぱり
した。料理をつくるアリョーナ
がめずらしく話しに加わり、ロ
シアの女性や学生達の話に花が
さく。
25日風強く何もみえない。どうな
ってしまうのか心配になる。ロ
シアのグループが帰りイタリア
の8人のグループがやってきた
。山に登るといっても来るなり
飲み、食べ、話し、歌い陽気な
人達だ。さすが皆な良い装備を
持っている。午後から少し明る
くなったのでむこうの山小屋の
後ろの尾根をスキーで登り、帰
りに小屋によってお茶をご馳走
になる。日本語で「管理室」と
か「キャンプ長」とか書いてあ
る表示があり、日本人が多く泊
まるのがよくわかる。いまは2
人の管理人だけなので、年中私
達のロッジに遊びにくるのだ。
26日、いよいよこの日に登れ
ないともう日にちがない。でも
サイクロンはまだ居座っている
。7:00起床、様子をみる。
少し雪がふっていて何も見えな
い、しかし風はない。どうなる
のだろうかと準備をして待つて
いると、ガイドのサーシャが午
後からは回復すると思うから出
ようと言う。9:45スノーキ
ャットで出発。この前と同じ所
まで行くがなんとなく空が明る
くなってきているようである。
10:30シールをしっかりつ
けて歩き出す。登頂の可能性は
今日しかないのでなにがなんで
も上がりたい。夏道の稜線が右
側にみえるが山スキーの良さで
、スキーアイゼンをつけて急斜
面をジグザグにどんどん高度を
かせぐが天候はよくならずに風
が強くなってきた。石室がある
という2200m近くまで登る
と、あとは火山特有の細かい軽
石のようなガレた火山礫に雪が
被っている急登である。
ここでスキーをデポし、靴にア
イゼンをつけてスタート。活火
山のため下は凍っていないよう
で歩きにくいことこのうえない
。しかも風はどんどん強くなり
まっすぐ立って歩けない。富士
山の上のほうを登山道以外のと
ころを歩いているような感じで
ある。夏道のロープがでてきた
のでもう少しでサミットだよと
いうが何もみえないのでわから
ないが、そのうち硫黄の匂いが
してきたので、ああもうじき頂
上だなとわかる。16:00も
のすごい匂いのなか黄色い稜線
にでた。1周しようというがあ
まりにすごい匂いだ。日本だっ
たらここまで上がらせないだろ
うと思う。
吹き飛ばされそうになりながら
下ることになるが、スキーをデ
ポしたところにきちんといける
か心配になってくる。何せ視界
3mくらいなのである。しかし
、さすがカムチャッカの山は全
部わかるガイドである。迷うこ
となく17:45デポ地点にし
っかり戻ったのには感服した。
ズボンも上着も凍ってしまった
が、早く下りないと暗くなって
しまうのであせる。しかし、行
きより急な斜面を下りるのに(
私だけ)手間取り、わーわー言
っているうちにどんどん暗くな
ってきた。20:00時やっと
ロッジに明かりがつき、近くま
できているのがわかり必死にス
トックをつ
いた。拍手に迎えられて暖かい
空気に体についたつららも溶け
てほっとする。イタリアチーム
は山はやめてスキー場に移動す
るという。登頂証をもらったが
、外国人の女性で冬の登頂者は
初めてとのことだった。
|